クライアントから選ばれる金融翻訳者になるための3つの要件
- 塾長
- Jul 14, 2017
- 5 min read

みなさん、こんにちは!
「金融翻訳者のための養知塾」塾長の寺崎です。
今回より、金融翻訳で活躍されている翻訳者、そして金融翻訳に興味をお持ちの方を対象としたブログを開始します!
金融翻訳は、実務翻訳の中でも膨大、かつ安定的な翻訳需要が存在する分野です。ところが一口に金融翻訳といってもそのジャンルは多岐に渡るため、その全てに精通するにはかなりの知識量が要求される分野でもあります。
事実、金融翻訳者の中には、米国公認会計士(USCPA)・米国証券アナリスト(CFA)をはじめとした専門資格の保有者も少なからずいますので、他分野からの参入を考えている翻訳者や翻訳スクール等で翻訳の基礎を学んだ方が尻込みする理由も分かります。
金融翻訳者に求められる三大スキルのバランス
ここで金融翻訳者に求められるスキルについて考えてみましょう。
一般に、プロの翻訳者に必要とされるスキルは、
① 英語力
② 日本語の表現能力、そして
③ 専門性
の3つと言われています。
ただ金融翻訳者に限って言えば、稼げるかどうかは専門性、言い換えれば「専門知識の幅と深さ」で決まります。私は、金融翻訳者に必要なスキルを10としたとき、この3つのスキルのバランスは、英語力:日本語の表現力:専門性=1:2:7くらいのイメージではないかと考えています。
専門性の重要性と伸ばし方については別の機会に譲るとして、本日のテーマに入りましょう。
「クライアントに選ばれる金融翻訳者になるための3つの要件」です。
これは翻訳に限らず全ての商品・サービスに言えることですが、クライアントに選ばれる、つまり「指名買い」されるくらいの商品力を獲得するには、クライアントを単に「満足」させるだけでは不十分です。「満足」の上には何があるのかというと、それは「感動」、「感激」そして究極は「感謝」です。アップルの製品が選ばれる理由もそこにあります。
それでは、これを金融翻訳の世界に置き換えたとき、クライアントに感動・感激を与え、感謝される翻訳サービスとは何か?この答えが、とりもなおさず「クライアントに選ばれる金融翻訳者になるための3つの要件」と言えます。
その3要件、知りたいですか???
お教えしましょう。それは、次の3つです。
1) クライアントの「業界⽤語」で書く。
2) 原⽂の「誤り」を指摘する。
3) クライアントを「教育」する。
それでは、この3要件について順番に解説しますね。
クライアントの業界用語で書く
私は仕事柄、ソースクライアントから依頼を受けて翻訳会社が納めた訳文を、財務の専門家としてチェックすることがあります。
そのときに「読んでいて安心できる訳文」というのがあります。それはどんな訳文かというと「業界用語」が身についている翻訳者による訳文です。業界用語とは、それぞれの専⾨領域で確⽴された⽤語体系(nomenclature)を基礎とした、専門家同⼠の情報伝達を効果的かつ効率的に⾏うための⼿段です。しっかりとした業界用語で書かれた訳文を見ると、「ああ、この人は自分と同じ業界、言い換えれば同じコミュニティーで生きている人だな。」と思えます。これが読んでいて「安心できる」ということです。
そしてこれが、感動・感激そして感謝されるための基礎となる「信頼関係」を生み出します。クライアントは翻訳者としてのあなたを知りません。でも、納めた訳文を通じて信頼関係を構築することができるのです。
原⽂の「誤り」を指摘する
私がここで言っている「誤り」とは、誤字脱字やスペルミスの類ではありません。そのような誤りを指摘するのは翻訳者として当然のことです。私が言っている「誤り」とは、もっと内容に関わることです。
まず比較的単純なものから行きますと、決算書などの翻訳における数字の誤りです。利益の額が売上から諸費用をした金額と合わない(これは単純なタイプミスの場合もありますが)、内訳の合計額が表示されている合計額と一致していない、表示すべき行がずれている、年度のアップデートが漏れている(例「2015年度第1四半期」とすべきところが「2014年度第1四半期」となっているなど)といったものです。これらについて、「ソースクライアント側で行うべき作業であり、翻訳者としてはそこまで責任を負っていません」と言ってしまうのは簡単ですが、それでは、単に「満足」な訳文で終わってしまいます。
それから英日翻訳の場合ですが、訳していてどう考えても筋が通らない英文に出くわすことがあります。そのようなときは、コメント挿入で疑問点を率直に述べるようにしています。原文の執筆者も人間ですから、間違うこともあるんです。あるいは会計基準などは特にそうですが、情報として古くなっている記述があります。そのようなときもコメントで指摘してあげます。
クライアントを「教育」する
「クライアントを教育するなんておこがましい...」と思われたかもしれませんが、ここでの真の意図は、クライアントに代わって「調べて差し上げる」ということです。訳文の最終チェックをする人は、その分野の専門家であることが多いわけですが、専門家といってもすべてを知っているわけではありません。また、だからこそお金を払ってまで翻訳を依頼するのだとも言えます。
そこで、私はその訳文にさらに付加価値を加えてあげることを常に心がけています。たとえば、訳出する過程で分かった補足情報、最新情報、参考資料のURL、(IR関連で言えば)他社の開示例などをコメントとして挿入して差し上げるのです。
最後に一言
いかがでしょうか?「翻訳者としての分をわきまえろ!」とか、「そんなことをしてあげるほど翻訳料をもらってないよ!」、という声が聞こえてきそうですね。
でもこれを「さりげなく」できるようになれば、クライアントをして「この翻訳者、何者なんだ?」と唸らせ、「次も是非またこの方に」となります。これは私自身の経験から言って間違いありません。
ただし、この「さりげなさ」を出すのには少し年季がいるかもしれません。この辺りを間違うと「この翻訳者、何様のつもりだ!」になりかねませんので...(笑)。
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